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《5》

「これから毎日利久と一緒に過ごせるなんて、嬉しいな」 「別に…、そんな大袈裟な話じゃねぇだろ…。だ、大体一緒に進級出来るかわからねぇぞ。俺、マジで勉強出来ねぇから」 赤なんて濁して言ったものの、前の学校でも最下位から数えた方が断然早かったし。 「大丈夫だよ。俺が絶対卒業させてやるから」 言いながら、手まで握ってくる良次に、敵わないと思う。 良次に言われると、本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だ。 再び頷けば、良次が微笑みながら握る手に力を込める。 そこから伝わる温もりが、自分は一人ではないのだと思えて、凄く安心する。 良次とそんなやりとりをしながら、ふと視線を感じてそっちの方に目線を向けた。 (げっ!?) 何とも言えない表情の優と目が合って、慌てて良次の手を振り払った。 授業が終わるタイミングを待っていたのか、すぐに優が俺達に詰め寄る。 「お前らさ、何2人の世界作ってんの?バレても良い訳?」 「い、良い訳あるか!」 「だったら気をつけろよ。授業中にいちゃいちゃしやがって」 「い、いちゃいちゃしてた訳じゃねぇ…!」 「してたわ。良次なんて、授業中でも女子の熱い視線集めてるんだから、マジでバレるぞ。つうか、誰にも見られなかったのが奇跡だわ」 呆れた様に言われて、言い返そうと思うけれど、優の言う事がもっともすぎて何の言葉も出てこなかった。

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