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《2》

ーピンポーン。 不意に鳴り響いたチャイムに、俺は驚いて目を開ける。 飛び込んできた良次の顔は、明らかに不機嫌だった。 忌々しげに舌打ちをした良次は、一瞬廊下の方を睨みつける。 だが、無視を決め込む事にしたのか、俺の制服のボタンに手を掛けた。 ーピンポーン。 再び鳴るチャイムの音に構わず、良次はボタンを外していく。 ーピンポーン。 ーピンポーン。 ーピンポーン。 しつこいチャイムの音に、俺は思わず良次のボタンを外していく手を掴んだ。 「良次…」 チャイムが鳴り響く中、やらしい事をするなんて絶対に嫌だ。 そういう思いを込めて、良次を見上げると、良次は『うっ』と小さく呻いて顔を顰める。 「良次、誰か来た…」 それでも退かない良次に困って、再び訴える。 そうすると、良次は深い深い溜め息を吐く。 そして、その手が名残惜しそうに俺の頬を撫でて、ようやく離れていった。

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