136 / 346
《9》
もう一度、腕を引かれて、思わずビクリと肩が震える。
予想外の良次の言葉の意図が分からない。
「お、俺も…?」
思わず聞き返せば、良次は面白い事でも思いついたかの様に含み笑いをする。
「俺に考えがある」
そう言い放つと、再び相原に視線を送る。
「今からコイツ連れて、皆の所行くわ」
そして、俺の事を相原に示してみせる。
「あと、コイツに手出すなって伝えとけ!」
「はぁ!?」
相原を外に追い出して、戸締まりをする。
訳が分からないと叫ぶ相原を置き去りにして、良次は俺の手を引いて車庫に移動する。
車庫の中から慣れた様子でバイクを引いて出てくると、それに跨がりヘルメットを投げて寄こす。
「乗れよ」
ヘルメットを渡されて、呆然と良次を見つめた。
バイクまで持ってるのか…?
いや、そうじゃなくて…!
「な、なぁ…。やっぱり、俺が行くのはまずいだろ…」
さっきの相原の様子から、良次のメンバー内では、かなり俺への
恨みが募っている様だった。
その中に行くのは、いくら喧嘩慣れしていても、流石に勇気がいる。
大体、何人いるのかも検討もつかない。
俺のせいで怪我人が出て、グループ内で騒ぎになっているのは申し訳ないとは思うけれど。
良次が俺をその中に放り込むとは思っていないが、出来るならそんな中に行くのは遠慮したかった。
ともだちにシェアしよう!