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《11》
「優に襲われた時だって…、まぁ、アイツはマジで強いけど、それでもお前なら十分抵抗出来ただろう?」
良次の言葉に、ぎゅっと拳を握り締める。
「…俺、もう喧嘩はしねぇって決めたんだ」
本当は、もっと早くそう決断出来たら良かったんだ。
そうすれば、母さんに余計な心配を掛けずに済んだ。
だけど、自分はガキで、そんな事に気づく事すら出来なかった。
ずっと。
母さんを守れる強い男になりたかった。
強さを、勘違いしていたんだ。
自分から望んで喧嘩をした事は無い。
だけど、どこかで調子に乗ってる自分がいたんだと思う。
今回、良次の仲間を大怪我させてしまったのも、きっと、そんな自分の驕りが招いた結果だ。
勉強も出来ない。
友達もいない。
そんな自分が、唯一誰にも負けた事が無いのが喧嘩だった。
母さんは、一度だって、喧嘩をするなと叱らなかった。
ただ、いつも心配そうにしていた。
怪我をしていないか。
痛い所は無いか。
喧嘩した後は、必ず聞かれた。
本当は、俺に喧嘩なんかして欲しくなかったんだ。
母さんが死んでしまった、今。
もう、間に合わないけど。
今度は、秋人おじさんや、良次に迷惑を掛ける様な事はしたくなかった。
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