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《2》

けれど、そんな雰囲気等お構いなしに、良次は飄々と答えた。 「コイツは俺のオンナだ」 良次の言葉にギョッとする。 その場の空気が凍りついた。 この場には何十人と大勢が居るにも関わらず、 まるでこの場に誰も存在しないかの様な静寂が訪れる。 涼しい顔でとんでもない爆弾を投下した良次の顔を、全員が凝視していた。 一体、良次は何を考えているのかと、怒鳴りつけようとして、一歩踏み出そうとした。 そんな中、一番最初に静寂を破ったのは金髪碧眼の美少年だった。 「良次、俺達はお前の冗談を聞く為に集まった訳じゃないんだよ」 口調こそ柔らかいけれど、その目は笑っていない。 「こんなつまんねぇ冗談言うかよ」 だけど、良次の態度は相変わらずだった。 「コイツに手ぇ出した奴は許さねぇ。分かったか?」 そう言い放つ良次に、誰がそんな馬鹿な話を真に受けるのだろうかと頭を抱える。 俺のせいで余所様のコミュニティが大いに混乱し、崩壊しそうだ。 内心慌てる俺を余所に、それまで怠そうにしゃがみ込んで話を聞いていた茶髪が急に立ち上がり、何故だかパチパチと拍手を始めた。 静寂に拍手の音だけが響き、そこには奇妙な時間が流れていた。

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