148 / 346
《9》
「優っ!?」
急に倒れた優に驚き、慌てて振り返ると、そこには良次が不動明王の様な形相で立っていた。
そこで初めて、優が良次に後ろから蹴られて、地面に倒れたのだと気づいた。
「テメェ…、優。何、利久に触ってんだ…殺すぞ!」
「理不尽!!」
良次と優がギャアギャアと言い争いをしている中、不意に後ろから声を掛けられた。
「改めて、よろしく」
美少年が俺に手を差し伸べる。
「あ…、ああ……」
握手なんて求められた事のない俺は、一瞬躊躇して、おずおずと手を出す。
志水は笑いながら、その手を取った。
「俺は、志水(しみず)。一応、このグループでは幹部をやらせてもらってるんだ。こっちの見るからにやる気がないのが紫苑(しおん)。それで、あの恐い顔をしてるのが天皇寺(てんのうじ)だ」
「どうも~」
「…………」
紫苑と呼ばれた茶髪は、怠そうにひらひらと手を振った。
天皇寺と呼ばれた黒ずくめは、チラリと俺を一瞥しただけだった。
紫苑はともかくとして、やはり天皇寺は俺を歓迎してはいない様だった。
「優とはもう知り合いみたいだから、紹介は必要ないね。優も含めて俺達4人が幹部だから、何か困った事があれば、気軽に言ってくれ」
「お、俺…、気持ちは有難いけど、グループに入るつもりなんてねぇんだ」
「天皇寺や相原の事なら、気にしなくても良い」
「え?」
「2人ともああは言っているけど、良次の決めた事には意見は言っても逆らいはしないさ」
そういうルールなんだと、志水が続ける。
「良次は絶対だからね。ここにいる奴らは全員、良次を慕って集まってるんだ」
そう言って志水は、俺を安心させる様に笑った。
ともだちにシェアしよう!