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《9》

「優っ!?」 急に倒れた優に驚き、慌てて振り返ると、そこには良次が不動明王の様な形相で立っていた。 そこで初めて、優が良次に後ろから蹴られて、地面に倒れたのだと気づいた。 「テメェ…、優。何、利久に触ってんだ…殺すぞ!」 「理不尽!!」 良次と優がギャアギャアと言い争いをしている中、不意に後ろから声を掛けられた。 「改めて、よろしく」 美少年が俺に手を差し伸べる。 「あ…、ああ……」 握手なんて求められた事のない俺は、一瞬躊躇して、おずおずと手を出す。 志水は笑いながら、その手を取った。 「俺は、志水(しみず)。一応、このグループでは幹部をやらせてもらってるんだ。こっちの見るからにやる気がないのが紫苑(しおん)。それで、あの恐い顔をしてるのが天皇寺(てんのうじ)だ」 「どうも~」 「…………」 紫苑と呼ばれた茶髪は、怠そうにひらひらと手を振った。 天皇寺と呼ばれた黒ずくめは、チラリと俺を一瞥しただけだった。 紫苑はともかくとして、やはり天皇寺は俺を歓迎してはいない様だった。 「優とはもう知り合いみたいだから、紹介は必要ないね。優も含めて俺達4人が幹部だから、何か困った事があれば、気軽に言ってくれ」 「お、俺…、気持ちは有難いけど、グループに入るつもりなんてねぇんだ」 「天皇寺や相原の事なら、気にしなくても良い」 「え?」 「2人ともああは言っているけど、良次の決めた事には意見は言っても逆らいはしないさ」   そういうルールなんだと、志水が続ける。 「良次は絶対だからね。ここにいる奴らは全員、良次を慕って集まってるんだ」 そう言って志水は、俺を安心させる様に笑った。  

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