触れれば、もっと欲しくなった。 今まで、これ程までに強い渇望は味わった事がない。 全て、手に入れたい。 離したくない。 初めて、そう思った。 それで、焦っていたのかもしれない。 自分をコントロールできないなんて、初めての事だった。 そのせいで、利久を酷く傷つけてしまった。 だけど、認めてしまえば、あっという間に利久に夢中になっている自分がいた。 利久を自分のものにしたいと、強く思ったんだ。 利久の寂しさにつけ込んだ自覚はある。 唯一の家族を亡くして、 不安や寂しさに押し潰されそうな利久に付け入るのは、簡単だと思った。 けれど、自分よりも劣っていると思っていた利久は、俺なんかよりずっとしっかりしていた。 そりゃあ、そうだ。 何不自由なく生活してきた俺よりも、母子二人で苦労してきた利久の方が精神的に優ってるのは当たり前だ。 利久に、大っ嫌いだと、顔も見たくないと言われて、今までの己の傍若無人な振る舞いのツケが回ってきたのだと思い、 俺はガラにもなく落ち込んだ。 だから、利久に好きだと言われた時には信じられなかった。 愛し方も分からずに、随分利久を傷つけてしまった。 だから、今度こそ何があっても利久の事を大切にすると、そう心に誓った。