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知らない顔《1》
「それじゃあ、お姫様は良次の家で暮らしてるんだね」
「ああ」
俺は志水と一緒にベンチに座っていた。
先程の緊張感等嘘の様に、辺りには和やかな雰囲気が流れていた。
以前、良次達が集まっていた公園はあの日、たまたま使っていただけで、普段はこの廃墟を溜まり場にしているのだと。
そう志水が教えてくれた。
「……志水は、良次と付き合い長いのか?」
「俺?」
志水が意外そうな顔をしたので、まずかったかと思いつつも頷くと、すぐに志水は答えてくれた。
「良次とは幼稚園から一緒でね。お姫様は知らないだろうけど、俺も藤ノ宮東高校なんだ。最も学年が違うんだけどね」
「え…?」
「俺は三年なんだ」
「へ…?じゃあ、先輩なのか…?」
「ここは、年齢の上下関係があまり無いんだ。あるとすれば、良次がリーダーでその次が幹部、幹部補佐に、その他のメンバー、新人って感じかな。幹部にはそれぞれチームが割り振られていて、幹部の指示で動く事になってるんだ。まぁ、お姫様には関係ない話だけどね」
「そのお姫様っての、やめてくれよ…」
俺は力無く項垂れる。
志水がお姫様と俺を呼ぶ度に頭痛がする。
何処の世界に、こんなゴツいお姫さまがいるというのだろうか。
明らかに面白がっているとしか思えない。
「ふふ、悪い」
そう言いながら、さして申し訳なさ等無さそうに志水は笑った。
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