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《4》
「ただ、他のグループの中には強い者を屈服させる事で快感を得る様なゲスもいるから気をつけた方が良い」
「…んだよ、それ」
志水の冷ややかな声に、はっ、と乾いた笑いが漏れる。
屈服…。
よく分からないが、気分の良い言葉ではない。
「ただ喧嘩を売ってきて勝ちたいだけならまだ良い。そういう輩は、卑怯な手も平気で使うし、惨い手段で相手を追い込んでくる」
「何の為に、んな事すんだよ」
「強い者をぶちのめして自分の強さを誇示したい奴、ただ単にそういう性癖を持ってる変態、理由は様々さ」
あまりの気持ち悪さに吐き気がしそうだった。
そんな気持ちの悪い奴が、この辺りにもいるというのだろうか。
「お姫様が喧嘩が趣味で名を轟かせてるならいいんだけど、そうじゃないんだろ?」
志水の言葉にすかさず頷く。
好きで喧嘩をした覚えもなければ、有名になりたいなんて事も思わない。
今までは、母さんを守れる様な強い男になりたかった。
でも、本当はきっと母さんは喧嘩なんかして欲しくなかったんだと思う。
いつも、余計な心配を掛けてしまった。
もっと早く。
母さんが生きてるうちに、そう気づけたら良かったんだ。
だから、今はもう悪目立ちをして、身近な人達に迷惑を掛けたくはなかった。
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