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《6》
「お姫様?」
「俺、良次に助けて貰ってばかりだ…」
ぐっと拳を握り締めるけれど、声は涙声だった。
志水はそれに気づいてるだろう。
だけど、優しく続ける。
「そんな事ないよ。良次があんなに良い顔してるの、久しぶりに見たよ。アイツ、昔からどこか冷めてる所があるからさ。少なくとも、あんな情熱的な事する奴じゃないんだ」
「志水…」
「きっと、お姫様が良次のあんな人間らしさを引き出すんだろうね」
知らない良次の寂しさや。
我慢していた不安や。
優しくされる暖かさに。
色んな感情が溢れ出す。
それに、良次はこんな優しい仲間がいるのかと。
志水に優しく慰められて、我慢してた涙が溢れた。
その途端、急に体を強く引き寄せられる。
「良次!?」
驚いてその名前を呼ぶ。
俺の体を引き寄せたのは、良次だった。
いつの間に、近づいていたのだろう。
全然気付かなかった。
「おい、志水。利久、泣かしてんじゃねぇよ」
良次が眉を顰めて、志水を咎める。
「俺じゃないよ、色男」
誤解だと言う様に、志水が少しオーバーに肩を竦めてみせた。
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