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《7》
心配そうな良次の顔が、俺を覗き込む。
「利久、大丈夫か?」
「良次っ…」
緊張の糸が切れたのか、嗚咽が漏れる。
良次の顔を見て、ほっとしたのかもしれない。
「ごめんね、利久。疲れたよな。一緒に帰ろう」
良次が抱き寄せる様に俺を立たせる。
「こんなむさ苦しい奴らがいる所に連れて来てごめんな」
「むさ苦しくて悪かったな」
相原が青筋を浮かべ、口元をひくつかせる。
「デカい図体でメソメソしやがって。最強の一匹狼が、ケツ掘られてオカマになっちまったのかよ?」
「お前、黙れよ。利久が怖がるだろ…!」
俺が泣いている理由を、怖かったのかとでも思ったのかもしれない。
良次が相原を睨みつける。
「はぁ!?こんなバケモンに怖いもんなんかあるのかよ!?」
「まぁまぁ、相原」
「はぁー、やだやだ。うちのリーダーは頭のネジでもどっかに落としてきたのかね-!?」
宥める志水を押し退ける勢いで相原は悪態をつくが、良次はそれを完全に無視している。
「利久、帰ろう。俺達の家に」
そう言って、良次が手を差し出す。
ー俺達の家。
良次の言葉を頭の中で反芻する。
アパートを出たあの日。
もう、帰る場所なんて無いと思っていた。
だけど、今は帰る場所がある。
俺は、差し伸べられたその手を、迷わず握り返した。
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