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優と天皇寺《1》
良次が利久の手を引いて、バイクのある場所までエスコートしていく。
相変わらず、相原は悪態をついていたけれど、2人には聞こえていない様だった。
それを遠目から、優は天皇寺と眺めていた。
「見てみろよ、あのデレデレした顔。クールビューティーが形無しだな」
「………」
良次の事を示しながら優は笑うけれど、天皇寺は無言のまま静観している。
その様子に天皇寺の心情を読み取って、優は天皇寺が取り出した煙草に火を点けながら続ける。
「納得いってないって顔してんな」
「…仮にアイツが良次の彼女なら今回の事にも二つ返事で納得してやる。だが、何故野郎を…、しかも自分より強い奴を守らなきゃならないんだ?」
吐き捨てる様に言う天皇寺に、優が肩を竦めてみせる。
「そんなん分かんないじゃん?実際にやってみたら、俺達の方が強いかもよ?」
軽い調子で言う優を、天皇寺がジロリと睨む。
「馬鹿言え。佐久間は次期幹部候補だぞ。それが、部下と束になってあのザマだ。お前か紫苑なら分からんが、俺や志水よりは明らかに強い」
「またまた御謙遜を~」
「…………」
冗談なのか本気なのか分からない優を咎める様に無言を貫けば、流石に空気を読んだのか優の顔も真面目なものに変わった。
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