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《2》
「小野部はさ、強いけど相当脆いよ」
「は?」
矛盾した言葉を理解出来ないと言う様に、天皇寺が聞き返す。
「噂じゃ化け物扱いだけどね~。優し過ぎる。アレ、例えば良次を人質に脅せば何でも言う事聞くんじゃない?良く言えば、純粋で素直。悪く言えば、プライドが低すぎるっつうか、自己犠牲が過ぎるっつうか」
「………」
「なぁんか危なっかしいんだよね。守ってあげたくなる良次の気持ちも何となく分かるよ」
「お前も大概お人好しだな」
言葉とは裏腹に馬鹿にした様な天皇寺の口調に、優はにやりと笑う。
「男の征服欲煽る様な目すんだよね~。そんなん、あの変態共に目つけられたら恰好の餌食よ?」
ワザと天皇寺が嫌がる下品な言い回しをすれば、案の定天皇寺は心底嫌そうな顔をした。
「はっ、男同士で気持ち悪い」
「ふ~ん?あんたがソレ言う?」
「何だと?」
天皇寺の反応が欲しいものと一致したのか、優が勝ち誇った顔をした。
「べっつに~。俺は差別とか偏見とかしない主義だからさ。ただ、メビウスの参謀様が、自分の事には御自慢の脳味噌も随分役に立たないもんだなと思ってさ」
「…何が言いたい?」
「別に言いたい事なんて無いよ。お前も良次を見習って少しは素直になったらな~とは思ってる。あ、これ一人言ね」
「……」
優の言葉を否定も肯定もせず、天皇寺は舌打ちをして煙草を地面に落とし、自身の苛立ちと共に踏み消した。
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