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好きな物《1》

帰宅した後、俺は良次と一緒に近所に買い物に出掛けていた。 良次の隣りを歩いていたけれど、ふとある店の前で足が止まる。 「利久…?」 「…あ、え?」 「………ケーキ?」 無意識だったけれど、あんまり真剣に見ていたせいか、良次が俺の視線の先の物に気づく。 俺の視線の先には、ガラス張りのケーキショップの中に、まるで小さな宝石箱が沢山並んでいる様な可愛らしいケーキがショーケースに並べられていた。 「ひょっとして、好きなの?」 良次の言葉に、ビクリと体が跳ねる。 正直、子供の頃から甘い物は大好きだった。 貧乏だったから、お菓子なんて滅多に買えなかったけれど、秋人おじさんがお小遣いをくれた時には、チョコレートとかを少しずつ買って大事に食べていた。 勇介の家に遊びに行った時には、勇介のお母さんがおやつを出してくれたけれど、ポテトチップス等のスナック菓子よりも、ドーナツ等甘い物の方が嬉しかった。 けれど。 自分が、それが似合わない事は良く分かっている。 素直に頷く事が出来なくて口篭もれば、それを察した様に良次が優しく笑う。 「買っていくか?」 「………う、や………」 「………?」 更に項垂れる俺の姿に、良次が不思議そうに首を傾げた。

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