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《2》
「で、でも、誕生日じゃないから」
「……はぁ?」
俺の言葉に、良次が訳が分からないという顔をする。
こんな綺麗なケーキは食べた事はないけれど、誕生日には母さんがスーパーで売っているケーキを買ってきてくれた。
丸い大きなケーキは、勇介の誕生日に食べた事がある。
その話を何気なく秋人おじさんにしたら、秋人おじさんが大きな丸いケーキを誕生日に買ってきてくれた事もあった。
凄く美味しかったけれど、誕生日の特別な日じゃないと食べられないから、誕生日が待ち遠しい。
そう良次に話すうちに、どんどん良次の目が憐れみのそれに変わっていく。
不思議に思い、首を傾げると、良次が深い溜め息を吐いた。
「あのな、利久。別に、ケーキは好きな時に食って良いんだぞ」
「………へ?」
「だから、誕生日じゃなくても、食いたい時に食って良いんだぞ」
「ケーキって誕生日じゃなくても食って良いのか!?」
驚く俺に、良次の表情が苦笑いに変わる。
「全員が誕生日にしか買わないんじゃケーキ屋も潰れちまうだろうよ」
「!?」
ケーキ屋が無くなってしまうなんて困る。
想像して、今度は絶望的な気持ちになる俺を見て良次が吹き出す。
「ふっ、本当に好きなんだな」
そして、おもむろに俺の手を引いてケーキ屋の扉を開けた。
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