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《4》
テーブルに並んだケーキは、どれも色とりどりでキラキラ輝いて見える。
可愛い見た目は、見ているだけで幸せな気持ちになる。
フォークで切り取れば、カラフルな断面が現れ、綺麗で幸せな溜め息がでた。
「いただきます!」
一口食べると、口いっぱいに複雑な美味しさが広がる。
クリームだけでも、何か沢山の物が入っているのか色んな味がする。
凝ったケーキの色んな味が、何なのかは貧乏舌の自分にはまるで分からないけど、とにかく甘くて美味しかった。
こんなに美味しい物が世の中にあるのかと思う。
ふと、感動しながら食べている自分を、良次がじっと見つめている事に気づく。
「あ…、良次も食えよ…って、俺が言うのも変だけど」
良次がお金を出して買ってくれたケーキを勧めるのは、いくら何でも図々しかったかなと思う。
だけど、良次は笑って首を横に振った。
「俺は甘い物はあまり得意じゃないから、利久が食べていいよ」
「でも…」
こんなに美味しいケーキを一人占めするのは、流石に罪悪感に苛まれる。
「甘いケーキを食べるより、幸せそうにケーキを食べてる利久を見てる方が俺は楽しいな」
「そう言われると、食いづらいんだけど……」
急に恥ずかしくなって、俺は残りのケーキを口の中に放り込んだ。
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