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《5》

「しかし、利久が甘い物が好きなんて知らなかったな」 くすくすと笑う良次に、ムッとしながらも手は次のケーキの乗った皿を引き寄せる。 「どうせ、似合わねぇよ…」 改めて言われなくても分かっている。 俺だってこんな容姿なのに、こんなに可愛いケーキを食べている姿はシュールだと思う。  だけど、意外にも良次はまさかと首を横に振る。 「そんな事ないよ、可愛いな」 良次の指が、俺の顎を持ち上げる。 俺は座っていて、良次が立っている状態だから、自然見上げる形になる。 「な、何…?」 急に良次に見つめられて、頬が熱くなるのが分かる。 そう言えば、良次よりも俺の方が身長が高いから、良次を見上げるのは新鮮に感じる。 綺麗な良次の顔が近づいてくる。 「ついてるよ、ここ」 「え…?」 そう言って、口元を拭われる。 「ありがと…」 「………」 黙り込んだ良次を不思議に思い、首を傾げる。 ふと、良次の目が熱を孕んでいる事に気づいて、心臓が早鐘を打ち始める。 「良…次…?」 手からフォークを取り上げられると、椅子から立つ様に促される。 何が良次のスイッチを入れてしまったのか全く分からない。 だけど、良次にテーブルの上にゆっくり押し倒されて、マズいと思った。

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