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《14》
「気持ち悪ぃ…」
良次が先程から具合悪そうに項垂れている。
俺は残りのケーキをせっせと口に運んでいた手を止めた。
「よく、そんなクソ甘いもん食えるな。う…、吐きそう…」
「こんな美味いケーキ食えないなんて、可哀想だ…」
ケーキのクリームだけで気持ち悪いを繰り返す良次が可哀想で、ジッと見つめる。
甘い物が食べられないなんて、人生の大半を損していると思う。
それと共に、どこか悪いのではないかと心配になる。
「………今度はクリーム無しで食うからいいよ」
「え!?」
唐突に悪戯に笑われて、固まる。
それって、ひょっとして…。
さっきの行為の中での事を言っているんだろうか…?
恥ずかしさに真っ赤になる俺を見て、良次が声を出して笑った。
「それにしても、まだまだ知らない事ばっかりだな」
何気なく笑いながら言った良次の言葉に、ふと今日の廃墟での事を思い出す。
良次の昔からの友人達や仲間達を羨ましいと思った。
彼等は、俺が知らない良次の事を沢山知っている。
特に仲の良さそうな優や志水達は、きっとこれからもずっと良次との付き合いは続いていくだろう。
これから自分が良次と過ごす時間は、彼等との時間を追い越す事はけして無い。
そう思い至ると、何故だか急に寂しい様な、悲しい気持ちになってしまう。
どうしてそんな気持ちになってしまうのかは分からないけれど、得体の知れない悲しさに俺は黙り込んだ。
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