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王子様レベルアップ《1》

移動教室の準備をして、一人で廊下を歩いている時だった。 不意に視線を感じて、そちらに目をやれば、見知った顔に足が止まる。 よく見れば、志水がひらひらとこちらに向かって手を振っていた。 一瞬、何故こんな所にいるのかとギョッとするが、 そういえば、同じ学校だと言っていた事を思い出す。 「志水…」 声を掛けようとして、俺は思わずそれを飲み込んだ。 「相原…?」 志水の隣りに相原の姿を見つけたからだ。 彼によく思われていない事は知っていたし、正直少し苦手なタイプだった。 スルーしようか迷うけれど、そんな俺の気持ち等お構いなしに、相原はズカズカと俺の前まで近づいてくる。 「おい、相原さんだろ!先輩に向かって呼び捨ててんじゃねぇよ!」 「相原、うるさいよ」 睨みつけてくる相原を、志水が注意する。 「相原も同じ学校だったんだな」 「そ、で、俺は先輩。お前は後輩。分かったら、今後口のきき方には気をつけ…」 「良次に会いに来たのか?良次なら、今職員室に…」 「って、聞けよっ!!」 「いや、俺達は学校やその近郊では最低限、良次とは接触しない事になってるんだ」 「え…?そうなのか?」 じゃあ、どうしてだろうか。 ここは、まだ二年の教室の近くで、三年生は滅多に来ない筈だ。 不思議に思い首を傾げると、志水が可笑しそうに笑った。

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