178 / 346
《2》
「お姫様が一人で寂しい思いをしてるんじゃないかと心配でね」
「俺…?」
志水の言葉に驚いて、自分を指差す。
「すげぇ厳ついヤンキーが転校してきたって噂になってるぞ、お前」
相原の言葉に、何となく気づいていたので頷くと、露骨に舌打ちをされる。
「ただでさえ目立つんだから、くれぐれも大人しくしとけよ。お前に目立たれると、こっちが迷惑するんだからな!」
「…言われなくても分かってるよ」
詰め寄る相原に思わずムッとした口調になる。
それが、相原のカンに障ったらしい。
「テメェ…、折角忠告してやってんのに、何だその態度は…!」
今にも掴み掛かってきそうな勢いの相原を、志水が肩を掴んで止める。
「相原…!全く、喧嘩売りに来たのか?君は。言ってる本人が問題を起こしてどうするんだ?」
「だって、コイツの態度がだなぁ…!」
揉め事はなるべく避けたいけれど、どうも相原とは相性が悪そうだ。
仲間を病院送りにしてしまったのだから、相原の怒りも当然といえば当然だ。
それに、相原は良次の仲間だ。
無駄に揉めたく無かった。
「俺の態度が気に触ったなら悪い。出来るだけ気をつける」
素直に頭を下げると、意外だったのか、簡単に相原は引き下がった。
「けっ、昨日は泣いてやがった癖に、偉く肝が据わってんじゃねぇかよ。オカマ野郎なのは、大和の前でだけか?気持ち悪ぃ」
俺に向かって吐き捨てた相原の後ろに、不意に影が掛かる。
「お前が口の利き方には気をつけろよ、相原ぁ」
「げっ!!」
「優!?」
いつの間にか近づいていた優が、相原の肩を組んでニヤリと笑った。
ともだちにシェアしよう!