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《9》
「何だ、小野部って怖い系かと思ってたけど、案外そんな事ねぇんだな」
「お、俺…、こんな見た目だからさ、前の学校でも、あんま馴染めなくて…」
前の学校で、入学早々絡んできた三年生連中をボコボコにした所為で、誰からも話し掛けてもらえなかった話は黙っておこう…。
うん…。
「いや、でもさ、見た目の話なら俺も超悩んでるっての!」
間髪を入れずに、優が会話を続ける。
もしかして…。
さっきから優はフォローしてくれているのだろうか。
自分の会話の後に、間が生まれない様に繋いでくれている気がする。
「女の子とかにさ、最初は折原君って、超良い感じ~とか言われる訳よ。それがさ、暫くすると、こんな馬鹿だと思わなかった~とか言われんのよ!?マジ、超ショックじゃね?」
「ソレはお前があんまり度を超した馬鹿だからだろ?」
「でも、優はモデルみたいにスタイル良いし…、顔も俺と違ってイケメンだし、モテそうだよな…」
「え…?小野部、俺に惚れた?付き合う?」
「な…!?何言ってんだ、馬鹿っ!!」
優の悪ふざけに慌てて叫ぶと、金田と諏訪がげぇっと声を上げる。
「うわぁ、クラスメイトがホモとか勘弁してくれよ~…」
「女にモテないからって、手近で済まそうとすんなよ」
俺が悪い訳じゃないのに、俺がダメージを受けているのは何故だろう…。
すいませんね、クラスメイトがホモで…。
「小野部って、見た目によらず話しやすいんだな!」
金田が俺の肩に腕を回した。
その瞬間。
ーーーーーバンッ!!!!
大きな音に、クラスにいた全員がその音の方を見て、静まり返る。
そこに立っていたのはいつの間にか戻ってきていた良次で、黒板に手を置いている。
そこで、初めて今の大きな音が、良次が黒板を叩いた音だと気付いた。
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