186 / 346

《10》

見れば、良次の目が完全に座っている。   何だか、途轍も無くヤバい予感がする。 ギロリと睨んだ良次の視線は、完全に俺達の方を捕らえていた。 「利久は俺のもんだ…!テメェら、ベタベタ汚ねぇ手で利久に触ってんじゃねぇっ!!」 そう、良次が叫ぶ。 良次の怒号の後、これだけの人数のいる教室に嘘の様な静寂が訪れる。 は………? 何て…………? 今、良次の奴…なんつった!? 暫く、他のクラスメイト同様に呆然と良次を見つめていたけれど、良次と付き合っている事を知っている自身が一番早く我に返る。 「何言ってんだよっ!?」 これじゃあ、俺達の関係と良次の素の性格とダブルでバレてんじゃねぇかよ!? シンーと静まり返る教室中の視線が、俺達に突き刺さる。 こんな状況を、俺が何とか出来る筈も無い。 口が達者で機転がきく優なら、この場を何とか出来るんじゃないか。 そう思い視線を向けるが、優は口を開けたまま完全にフリーズしている。 その瞬間、この状況がどうにもならないと悟った。 終わった…。 生まれて初めて、人生が終わったと思った。

ともだちにシェアしよう!