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《13》

「そんなに大事なら、首に縄でも掛けて家に繋いでおけば?」 「……………」 「…考えんなよ。冗談に決まってんだろ。小野部が不憫すぎるわ」 考え込む為に黙り込んだ良次に、優が呆れた様な声を上げる。 「ま、メビウスの事がバレた訳じゃねぇし良いんでない?お前のあの優等生キャラももう卒業って事で。俺、アレ嫌いだったんだよね~」   「……悪い。利久の事、フォローしてやってくれ」 「はいはい、俺はお前も血の通った人間だったんだなーって、ちょっと安心してるよ」 「そもそも…だ。お前…、利久にちょっかい出し過ぎじゃねぇか?あんま触んなよ…」 「何で冗談言う時までお前に気使わなきゃならんのよ。やだよ」 「利久は可愛いすぎるからな…。お前も含めて、いつ誰に狙われるか分かったもんじゃねぇ」 「それ、お前だけだから安心しろよ…」 何だか声を掛けずらくて、俺は無言で男子トイレを後にした。 とてもじゃないけれど、恥ずかしすぎてあんなタイミングで声なんて掛けられない。 頼むから、第三者に俺を可愛いとか言うのは止めて欲しい。 優が言う様に、そんな風に思ってくれるのは良次だけなのだから。 だけど…。 嫉妬も…、俺の事を好きでいてくれるからかと思えば不思議と嫌な気持ちはしなかった。 甘やかされて、嫉妬されて、過剰な位に心配されて…。 それが、嬉しいなんて。 自分も相当恥ずかしい。 優との話が終わるまで、仕方ないのでおとなしく教室で良次を待つ事にした。

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