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《2》
一頻り泣いて、泣きまくって。
やっと落ち着いた頃、俺は腕の中のぬいぐるみを抱き締めた。
「りょうちゃん」
「は…?」
俺がそう呟くと、良次が怪訝な顔をした。
「クマの名前。母さんがつけてくれたんだ」
母さんがくれたクマのぬいぐるみにそっくりなテディベア。
だけど、子供の頃から俺の悲しい時も嬉しい時も一緒に居て、守ってくれたりょうちゃんじゃない。
だから、こいつはりょうちゃん2号だ。
りょうちゃんと一緒で、大好きな人がくれたぬいぐるみ。
りょうちゃんは捨てられてしまったけれど、今度はりょうちゃん2号とずっと一緒に過ごしていくんだ。
「いや…、その、何だか照れ臭いな」
「あ…、良次もりょうちゃんだもんな!」
「いや、俺はりょうちゃんじゃねぇんだけど。第一そんな呼ばれ方した事ないよ」
「凄い偶然だな!」
興奮気味に言った俺に、良次が苦笑いする。
「りょうちゃんを貰った時、俺、まだ保育園のガキでさ。雷が怖くて泣いてたら、りょうちゃんが守ってくれるんだって、母さんがくれたんだ」
「へぇ、雷怖いんだ?」
俺の話に、良次がにやにやと笑うから、慌てて否定する。
「が、ガキの頃の話だからな!」
「はいはい」
「…りょうちゃんが守ってくれたから、何にも怖くなかったんだ」
嵐の夜も、
大勢に囲まれて喧嘩を売られた時も、
母さんとお別れした日は、やっぱり辛かったけれど、
それでも、りょうちゃんがいたから乗り越えられたんだ。
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