200 / 346

《2》

一頻り泣いて、泣きまくって。 やっと落ち着いた頃、俺は腕の中のぬいぐるみを抱き締めた。 「りょうちゃん」 「は…?」 俺がそう呟くと、良次が怪訝な顔をした。 「クマの名前。母さんがつけてくれたんだ」 母さんがくれたクマのぬいぐるみにそっくりなテディベア。 だけど、子供の頃から俺の悲しい時も嬉しい時も一緒に居て、守ってくれたりょうちゃんじゃない。 だから、こいつはりょうちゃん2号だ。 りょうちゃんと一緒で、大好きな人がくれたぬいぐるみ。 りょうちゃんは捨てられてしまったけれど、今度はりょうちゃん2号とずっと一緒に過ごしていくんだ。 「いや…、その、何だか照れ臭いな」 「あ…、良次もりょうちゃんだもんな!」 「いや、俺はりょうちゃんじゃねぇんだけど。第一そんな呼ばれ方した事ないよ」 「凄い偶然だな!」 興奮気味に言った俺に、良次が苦笑いする。 「りょうちゃんを貰った時、俺、まだ保育園のガキでさ。雷が怖くて泣いてたら、りょうちゃんが守ってくれるんだって、母さんがくれたんだ」 「へぇ、雷怖いんだ?」 俺の話に、良次がにやにやと笑うから、慌てて否定する。 「が、ガキの頃の話だからな!」 「はいはい」 「…りょうちゃんが守ってくれたから、何にも怖くなかったんだ」 嵐の夜も、 大勢に囲まれて喧嘩を売られた時も、 母さんとお別れした日は、やっぱり辛かったけれど、 それでも、りょうちゃんがいたから乗り越えられたんだ。

ともだちにシェアしよう!