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《6》
「利久…?」
突然足を止めた俺に、不思議そうに良次が問いかける。
「…?」
何故、立ち止まってしまったのか、自分でも分からなかった。
だけど、何だか違和感を感じていた。
この道を、以前にも通った様な気がする。
いや、まさか。
自分は、この歳になるまで、この町には来た事はない筈だ。
だけど、酷く大切な事を忘れている様な焦燥感に、俺の足は自然と知らない筈の道へと歩を進めていた。
俺…、ここに来たことあるかもしれない。
更に歩を先に進めようとした時だった。
「利久…」
腕を掴まれ、俺はようやく足を止めた。
「そっちは斎場だぞ」
「斎場…」
母さんが亡くなった時、
行った事がある。
斎場。
葬式をする所だ。
その時は前に住んでいた町の小さな斎場でおじさんと俺や近所の人達で細やかな葬儀をした。
だけど、目の前に広がるのは広大な敷地の斎場だった。
こんな立派な広い斎場に来たのは初めてだと思うんだけど…。
それでも、何故かその場所がとても気になって、暫く動く事が出来なかった。
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