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《7》
「利久、どうしたんだ?」
広い斎場を眺めて一向に動こうとしない俺を、良次も暫く見つめていた。
「俺、此処に来た事がある気がする…」
俺がそう言うと、良次が俺の手を引いて斎場の方へと歩き始める。
「良次?」
「気になるんだろ?」
そう言って、入り口を抜けて中に入っていく。
「ちょっと此処で待ってて」
受付の人と何やら話をして、良次が戻って来る。
「今日は葬儀は入ってないから、中に入っても大丈夫だって」
「え…?」
そんな簡単に中に入れるなんて思わなかったから驚いている俺の手を、優しく良次が引く。
「おいで」
良次に促されると、俺はまたふらふらと歩き出す。
中に入ると、やはりそこには見覚えがあった。
一体、何時の事だろうか。
自分は確実に、此処を訪れた事がある。
以前来た時は、此処は更にもっと広い気がした。
だけど、それは自分が小さかったからだ。
そうだ。
まだ、保育園の時だった。
母さんが、とても悲しそうな顔をしていたのを覚えている。
あの時は、どうして母さんが悲しんでいるのか分からなかった。
だけど、今ようやく分かった。
あれは。
誰かの葬式だったんだ。
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