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《10》
「ちょこれいと!」
手の平の上のチョコレートを見て、キラキラと目を輝かせる俺を見て、王子様はホッとしたように頬を緩ませる。
「お菓子が好きなんだね」
そう言って、王子様は俺の両手にお菓子を乗せていく。
王子様の鞄からは、次々とチョコレートやクッキー等お菓子が出てくる。
その光景は、さながら魔法の様だと思った。
両手から溢れそうなお菓子を、王子様は俺のポシェットに仕舞う。
その中の一つの包み紙を開けて、王子様はチョコレートを一つ俺の口に入れてくれる。
口いっぱいに広がる甘さに、俺は両手で頬を押さえた。
もう、怖いや悲しい気持ちはいつの間にか、すっかり吹き飛んでしまっていた。
甘い、美味しいと繰り返す俺に、王子様
が話し掛ける。
「可愛い犬のフードだね」
深く被っていた俺のパーカーのフードを、王子様が軽く引っ張る。
それに、ちょっとだけムッとする。
「あうぅ、違うの。狼さんなの!」
男らしくて格好いいからとお気に入りのパーカーは、狼のフードがついていた。
いくら王子様でも、この格好いい狼のお洋服を犬呼ばわりした上に、可愛いなんて心外だと精一杯怖い顔をして意思表示する。
すると、王子様は申し訳なさそうに笑って、ごめんねと謝った。
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