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《13》

良次の機嫌が悪い。 結局斎場を後にして、家に帰るまで良次は終始無言だった。 理由は分かっている。 俺が変な事を口に出してしまったからだ。 『物心ついた時から男が好きだったのかな…』 そう呟いた後に、振り返った時の良次のギョッとした顔はなかなか頭から離れてくれない。 無言で俺の手を引く良次に、俺は慌てて思い出した事や、そんな言葉を呟いてしまった経緯を説明した。 だけれど、説明すればする程に良次の表情は険しくなっていった。 夕食を食べている時も、片付けをしている間も、話し掛けても良次は素っ気ない相槌を打つだけだった。 そんな空気に耐えられなくて、俺はソファに座ってる良次の隣りに座ってその袖を引く。 「良次…、怒ってる?」 「………別に」 やっぱり怒ってる…。 「あの…さ、変な事言ってごめん…」 「………」 「でも、さっきも言ったけど、あれは深い意味は無くて…」 「他の男と結婚の約束した訳だ?」 良次の言葉に驚く。 怒っているのは、俺が良次を振り回した挙げ句、変な事を言ってしまったからだと思っていた。 まさか、子供同士の口約束を怒っているのだとは思わなかった。 「でも、その、ガキの頃の話だし…。俺もさっきあそこに行くまで忘れてた位で…。第一、男同士で結婚も何も…」 「だけど、その時は本気で結婚するつもりだったんだろ…」 「りょ、良次……」 困り果てて言葉を失った俺に、良次は項垂れて溜息を吐いた。 「……悪い、大人気ない事を言ってる自覚はあるんだ…。けど、お前の事になると、どうも平静でいられない」 立ち上がった良次が俺の隣りをすり抜けていく。 「今日はもう寝るよ。今は、まともな事を言える自信が無い」 音を立てて閉まった扉を、俺は暫く見つめたまま動けなかった。

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