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《16》
簡単に良次が機嫌を直して貰えると言う志水に、どうしたら良いのか聞こうと思って身を乗り出す。
だけど、不意に優がにやりと笑って俺の肩に腕を回した事で遮られる。
「その王子様ってそんなに格好良かったんだ?」
からかいを含んでいる様な優の話し方は気になったけど、俺は大きく頷いた。
「ガキの頃の記憶だから曖昧なんだけど、あんな綺麗な人間がいるんだなって子供ながらに驚いたんだよな」
今思い出してみても美しい人形の様に綺麗な少年だった。
記憶の中の王子様像は少し朧気だけれど、夕日に煌めく黒髪に陶器の様に白い肌をしていた。
「そんな美少年そう居るもんでもねぇだろうし、案外探せば見つかるんじゃねぇ?」
「…え?」
「この町で出会ったんだろ?じゃあ、運命的な再会も有り得るだろ」
「いや、別に再会するつもりは…」
優に言われて、ふと考え込む。
別に今更わざわざ探して会いたい訳ではないけれど、もし再会出来たら、あの時迷子になった自分を助けてくれた御礼は言いたいとは思う。
「……まだ、この町に住んでるのかな?」
「どうだろうな。何かその王子様の事他に手掛かりねぇの?名前とか、年齢とかさ」
「それが、何にも知らないんだよな…。それに、まだ小学校に上がる前の事だったし、向こうはきっとあの日の事は覚えてないだろうな」
俺は、自分よりも少しだけお兄さんに見えた少年の事を思い出していた。
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