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《18》

「小野部には幸せになってもらいたいんだよな」  「何で…?」 いつも優は優しくしてくれる。 それが有難くも不思議で、思わず尋ねる。 「友達の幸せ願わない奴なんて居ないだろ?まぁ、小野部は苦労してきたんだろうし、出来たら今後は人より良い思いばっかして過ごして欲しいってのが本音」 「優…」 優の言葉にうっかり鼻の奥が熱くなる。 別に、自分が人様より特別に苦労してきたとは思わない。 だけど、優が自分の事を案じてくれている事が有り難かった。 俺は慌てて優を肘で小突いた。 「お、お前、俺を泣かそうとしてるだろ…?」 「はは、バレた?」 「王子様…ねぇ」 冗談っぽく笑った優の後ろで、志水がポツリと呟いた。 ◇◇◇ 結局、放課後も良次は委員長の仕事でタイミングが合わなかった。 「…………」 もし、このまますれ違ったままが続いたらどうなってしまうのだろう。 このまま良次の心も離れていきそうで、胸がざわつく。 胸を占める不安な気持ちに、心が押し潰されてしまいそうだった。

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