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《19》
「ああ、良かった。お姫様、今帰り?」
最近、随分と聞き慣れてきた声に振り返る。
「志水………」
振り返った視線の先には志水が立っていた。
「良次…は、委員長の仕事か。相変わらず忙しそうだね。それにしても、良次がいないのにお姫様に優がついてないのは珍しいね」
「優なら今日は用事があるって言ってたけど…」
「なるほど。それで、俺に声が掛かった訳か」
「………?」
もしかしたら、優を探していたんだろうか?
「優に用事か?」
「いや、俺が用があるのはお姫様にだよ」
「え?俺?」
驚いて目を見開けば、志水が可笑しそうに笑う。
「お姫様が一人なら一緒に帰ろうと思ってね。良いかな?」
「俺と?別に、構わねぇけど…」
「良かった」
「俺と二人で帰っても、面白くも何ともねぇと思うけど」
「そんな事ないよ。前にも言ったけど、俺はお姫様のファンなんだ。一緒に帰れるなんて光栄だよ」
「あ、あのなぁ…」
俺みたいなのに、ファンだなんて言われてもまるで意味が分からない。
そもそも、志水の方こそファンがつきそうな位の美少年だ。
そんな志水に、冗談にしろそんな風に言われるのは居たたまれない。
「からかうのは止めてくれ…。その、どんな反応をしたら良いのか分からねぇ」
困り果てて言った俺の言葉に、志水は驚いた様な顔をした。
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