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「それも、ほんの数年の間だけだけどね」 「え…?」 「あの頃はどうして自分が虐められるのかが分からなくてね。自分の悪い所を直そうと必死だったんだ。でも、良次が小学校に上がった頃に、髪を染めているのがバレてね」 「良次に?」 「そう。何故綺麗な色をわざわざ染めるのかと怒られてね…」 可笑しそうに志水が続ける。 「良次に言わせれば、見た目でしか人を判断出来ないレベルの低い人間に合わせるのは馬鹿だそうだよ。と、言っても子供に見た目以外で判断するのは、なかなかハードルが高いけれどね」 「…良次ってガキの頃から俺様なのな」 簡単に想像つくけど…。 「はは、そうだね。でも、少なくとも俺はあの時、良次に凄く救われたよ。ずっと引け目に感じていた事が、他愛も無い事だって言われた気がしてね。それからは、自分を偽るのは止めたんだ」 笑いながら言った志水にとっては、それは消してしまいたい過去では無くて、良い思い出の様に思えた。 「楽しそうに話すんだな」 「そうだね。俺にとっては大事な思い出かな。良次にはそういう力があるんだ。マイナスをプラスに変えてくれる力がね」 志水の言葉から、志水がどれ程良次を信頼しているのかが分かった。 「今思えば、良次についていこうって、その時思ったのかもしれないな」 「良次って、人望あるんだな…」 「そうだね。メビウスのメンバーは、皆良次を慕って集まってるからね」 「…………」 「お姫様?」 急に黙り込んだ俺の顔を、志水が覗き込んだ。

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