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《26》

ーガチャッ 不意に響いた音に、意識が引き戻される。 まだ覚醒しきっていない頭が、ただの日常音なのに、異常に驚く。 反射的に音に弾かれて顔を上げれば、ドアを開けた良次と目が合い、心臓が跳ねた。 「あ…………」 何故良次が目の前にいるのだろう。 慌てて周りを見渡せば、ここはリビングだった事を思い出す。 俺はリビングのソファで踞っていた。 どうやら帰宅した後、リビングでいつの間にか寝てしまっていたようだった。 「こんな所で…、風邪ひくぞ…」 俺に向かって、良次の手が伸びてくる。 良次に優しく撫でられて、泣いてしまいそうだった。 今なら仲直りできるかもしれない。 そう思って、俺は良次を見上げた。 「あ、あのな…!」 けれど、良次の手はすぐに離れていく。 代わりに目の前に何かを差し出されて、俺の言葉は遮られた。 「電話」 「え?」 差し出された良次の手に視線を落とせば、そこには良次の携帯が握られていた。 「志水から、お前に電話だ」 「え!?俺に…?…あ、りょ………」 驚きつつ、差し出された電話を手に取れば、すぐに良次は部屋から出て行ってしまった。 俺は、暫く、呆然と良次が出て行ってしまったドアを眺めていた。

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