224 / 346
《26》
ーガチャッ
不意に響いた音に、意識が引き戻される。
まだ覚醒しきっていない頭が、ただの日常音なのに、異常に驚く。
反射的に音に弾かれて顔を上げれば、ドアを開けた良次と目が合い、心臓が跳ねた。
「あ…………」
何故良次が目の前にいるのだろう。
慌てて周りを見渡せば、ここはリビングだった事を思い出す。
俺はリビングのソファで踞っていた。
どうやら帰宅した後、リビングでいつの間にか寝てしまっていたようだった。
「こんな所で…、風邪ひくぞ…」
俺に向かって、良次の手が伸びてくる。
良次に優しく撫でられて、泣いてしまいそうだった。
今なら仲直りできるかもしれない。
そう思って、俺は良次を見上げた。
「あ、あのな…!」
けれど、良次の手はすぐに離れていく。
代わりに目の前に何かを差し出されて、俺の言葉は遮られた。
「電話」
「え?」
差し出された良次の手に視線を落とせば、そこには良次の携帯が握られていた。
「志水から、お前に電話だ」
「え!?俺に…?…あ、りょ………」
驚きつつ、差し出された電話を手に取れば、すぐに良次は部屋から出て行ってしまった。
俺は、暫く、呆然と良次が出て行ってしまったドアを眺めていた。
ともだちにシェアしよう!