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《27》
「もしもし…?」
我に返り慌てて携帯に話しかける。
『やぁ、お姫様』
聞こえてきたのは、良次が言っていた通り、志水の声だった。
志水の声を聞いて、志水と一緒の帰り道、俺は逃げるように帰ってきてしまった事を思い出した。
「志水…、その、さっきはごめん…。急に、その・・・」
なんて言ったらいいか、言葉につまる。
どう考えたって、不自然な行動だったと思う。
なんて説明したらいいか考えて黙り込んだ俺に、志水が口を開く。
『ああ、俺が何かお姫様の嫌な事しちゃったんじゃないかって、心配になってね。もし、そうならごめんって、一言謝りたかったんだけど、違うならいいんだ』
優しい志水の言葉に、ほっと胸を撫でおろす。
それと同時に、志水に対して申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
「志水が何かしたなんて、そんな事ねぇよ。本当、さっきはごめん。ちょっと色々思い出しちまって、」
『色々?』
「あ、いや、例の子供の頃の話を、ちょっと思い出して」
『お姫様』
言いかけた俺の言葉を、志水が遮った。
『今から少し会えないかな?』
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