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《31》

吸い込まれてしまいそうな、蒼い瞳。 「お、俺…は……」 口の中が渇いて、舌が縺れる。 「子供の頃とは、随分容姿は変わっていたけれど、お姫様に出会って、お姫様が初恋のあの子だったら良いのにってずっと思ってた」 あの日助けてくれた王子様が、目の前にいる。 綺麗で優しい、志水。 だけど・・・。 「ご、ごめん・・・志水」 俺は、勇気を出して声を絞り出した。 きっと、良次と出会っていなければ、また好きになっていたかもしれない。 あの、迷子で心細くて怯えていたあの日みたいに。 だけど・・・・。 「ごめん…」 だけど、答えなんて決まっていて。 「俺、志水の気持ちには、応えられねぇ…」 こんなに真剣に思いを伝えてくれているのに、思い出していたのは、良次の事だった。 最初は、なんて嫌なやつなんだと思っていた。 意地悪で、酷いやつだと思っていた。 だけど、本当は優しくて、かっこ良くて。 本当に、俺が好きなのは、良次だけだ。 今は、ケンカ…というか、避けられしまっているけれど。 「俺…、やっぱり良次の事が好きだ」 俺は痛いくらいに拳を握りしめて、志水に伝えた。

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