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《33》
一体、いつから志水とのやり取りを見ていたのだろう。
良次の様子を見るに、少なくともたった今、家の中から出てきた様には見えなかった。
どうやら、志水との一連のやり取りを見ていたらしい良次の体は、何かの感情を堪える様に震えていた。
その震えが、怒りによるものだと分かったのは、次に良次が口を開いた時だった。
「盗み聞きなんて、お前らしくないな。良次」
「人の家の前で盗み聞きもクソもねぇだろ」
苦虫を噛み潰したような顔で、良次は志水を睨む。
「まぁ、お前が幼馴染の家の前で、その恋人にちょっかい出す様な野郎だとは思わなかったがな?見る目が変わるよなぁ?志水・・・」
「おいおい、ほんの冗談だろう?」
やれやれと肩を竦めて見せる志水に、良次が呆れたように鼻で嗤う。
「ハッ、冗談!?俺には冗談には聞こえなかったけどなぁ・・・?」
「落ち着けよ、お前らしくもない。そんなに感情を抑えられない位にお姫様の事が大事なら、最初から素っ気なくなんてしなければいいのに」
「・・・なんだと・・・?」
「お前がね、お姫様を傷つけるのが怖くて、距離を置いたのなんて、安易に想像できるよ。大方、落ち着いて、いつもの冷静な自分に戻れば、いつもみたいにうまくやれるって思ってたんだろう?」
付き合いが長い為か、恐らく志水の言っている事は、図星だったのだろう。
良次が露骨に嫌そうな顔をした。
「だけど、お前が一人マイペースにクールダウンしようとしてる間、お姫様がどれだけ不安だったと思う?」
「・・・何が言いたい?」
「ちゃんと自分の手で守ってやれよ、辛い思いさせるなよ。側に居てやれよ・・・。こんな良い子に、悲しそうな顔、・・・させるなよ・・・」
そう良次に向かって畳掛ける志水の方が、何故だか辛そうで、まるで何かを我慢しているように苦しそうだった。
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