231 / 346

《33》

一体、いつから志水とのやり取りを見ていたのだろう。 良次の様子を見るに、少なくともたった今、家の中から出てきた様には見えなかった。 どうやら、志水との一連のやり取りを見ていたらしい良次の体は、何かの感情を堪える様に震えていた。 その震えが、怒りによるものだと分かったのは、次に良次が口を開いた時だった。 「盗み聞きなんて、お前らしくないな。良次」 「人の家の前で盗み聞きもクソもねぇだろ」 苦虫を噛み潰したような顔で、良次は志水を睨む。 「まぁ、お前が幼馴染の家の前で、その恋人にちょっかい出す様な野郎だとは思わなかったがな?見る目が変わるよなぁ?志水・・・」 「おいおい、ほんの冗談だろう?」 やれやれと肩を竦めて見せる志水に、良次が呆れたように鼻で嗤う。 「ハッ、冗談!?俺には冗談には聞こえなかったけどなぁ・・・?」 「落ち着けよ、お前らしくもない。そんなに感情を抑えられない位にお姫様の事が大事なら、最初から素っ気なくなんてしなければいいのに」 「・・・なんだと・・・?」 「お前がね、お姫様を傷つけるのが怖くて、距離を置いたのなんて、安易に想像できるよ。大方、落ち着いて、いつもの冷静な自分に戻れば、いつもみたいにうまくやれるって思ってたんだろう?」 付き合いが長い為か、恐らく志水の言っている事は、図星だったのだろう。 良次が露骨に嫌そうな顔をした。 「だけど、お前が一人マイペースにクールダウンしようとしてる間、お姫様がどれだけ不安だったと思う?」 「・・・何が言いたい?」 「ちゃんと自分の手で守ってやれよ、辛い思いさせるなよ。側に居てやれよ・・・。こんな良い子に、悲しそうな顔、・・・させるなよ・・・」 そう良次に向かって畳掛ける志水の方が、何故だか辛そうで、まるで何かを我慢しているように苦しそうだった。

ともだちにシェアしよう!