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《34》

「…さっき、冗談って言ったよな?お前のそのツラのどこが冗談言うようなツラだよ」 「お前があまりに綺麗さっぱり忘れてるみたいで、少し腹が立ってね。少し意地の悪い冗談のひとつでも言いたくなっただけだよ」 「はぁ?」 志水の言葉の意図する所が分からなかったのだろう、良次が更に苛立つ。 「本当に覚えてないのか?」 「だからっ、何がだよ…!?」 話の流れは分からないけれど、今にも志水に掴みかかりそうな勢いの良次に、俺は慌てしがみついた。 「や、やめろよ・・・」 だけど、止める声は完全に鼻声になってしまっている。 志水が話してくれた思い出や、会話から、志水が、どれ程良次の事を大切に思っているか、知っている。 もしも、俺なんかのせいで、良次と志水が仲違いなんてしてしまったら・・・。 そんな取り返しのつかない事になってしまったら、お詫びのしようが無い。 そう思うと怖くて怖くて 俺は、夢中で良次に縋った。 「と、利久…?」 俺の行動に驚いた様に、瞬きを繰り返して、良次が見つめる。 「俺なんかの為に、志水と喧嘩なんかしないでくれ…。小さい頃からの大事な友達なんだろ?10年以上一緒に過ごしてきた仲間なんだろ?そんな大切なヤツと、良次が喧嘩すんの、嫌だよ…」 「どうして、利久がそんな事知ってるの?」 「…そ、それは…」 志水が話してくれたと伝えたら、また怒らせてしまうだろうか? オロオロと狼狽える俺に、良次は困った様に笑った。 ついさっきまで怒っていた良次が、困り顔とはいえ、笑顔になった事に、俺は少しだけ安心した。

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