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《37》

今まで黙っていた良次が、俺と志水の間に入ってくる。 「お前は今後、利久と二人きりになるな」 「心配しなくても、もう今後ちょっかいかけたりしないよ」 「ハッ、どうだかな」 「ちょ、ちょっと、待てよ!志水は、俺達を仲直りさせてくれる為に、あんな事言っただけなんだから、そんな怒らないでくれよ!」 「あのね、利久。利久のそういう純粋な所も俺は好きだけれど、少しは自分の可愛さを自覚して欲しい」 「はぁ!?」 こんなガタイの良い自分を捕まえて、可愛さを自覚しろなんて、どんな罰ゲームだ。 良次が俺の事を可愛いと本気で言っているのだという事は分かる。 だけど、良次以外の奴が俺の事をそんな風に思うなんてあり得ない事だ。 こんな事を毎日繰り返して言われるから、俺の感覚までおかしくなってしまうんだ。 「俺の事を可愛いなんて思うのなんて、良次ぐらいだろ!」 「男はみんな狼なんだから、気をつけないと利久みたいな純粋な子なんて、すぐに騙されて食べられちゃうよ!」 小さい子に言い聞かせる様に俺に告げる良次の言葉に、俺は本気で頭を抱えた。 「それだけ、良次はお姫様に惚れてるんだよ」 「志水、ごめんな…」 「まぁ、もしもお姫様が良次に愛想が尽きて僕を選んでくれたら、しっかり責任はとるつもりだから」 「ええ!?」 志水まで悪乗りして、俺をからかい始める。 また冗談だと分かっていても、動揺してしまう。 本当に、そういう冗談は心臓に悪いからやめて欲しい。 「うるせぇ、さっさと帰れっ!」 苛立ちながら良次が叫ぶ。 「ははは、じゃあ、邪魔者は消えるから、お幸せに」 志水は踵を返すと、ヒラヒラと手を振って、元来た道に歩を進める。 「初恋は、叶わないっていうけど…」 誰に言うでもなく、志水は呟く。 「・・・本当に、叶わないんだなぁ」 ぽつりと呟いた志水の言葉は、誰に届く事もなく、風に攫われて消えていった。

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