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《39》

「…おじ………さん?」 ヤバイ。 ヤバイ。 体中から、どっと勢いよく汗が噴き出す。 おじさんに見られた。 良次と、キスしてる所。 俺達はお互いに身動き出来ずに、暫くその場に立ち尽くした。 ーーーーー 言い訳が全く思いつかない。 あの後、良次がおじさんを家に招き入れ、俺達は沈黙を保っていた。 おじさんが俺と良次のやり取りのどこから見ていたかは、分からない。 だが、どこから見ていようと誤魔化すのは無理そうだと俺は頭を抱えていた。 「お、おじさん…。」 冷戦状態の空気に耐えきれず俺が口を開いた時だった。 「秋人さん」 良次が、おじさんの前に膝をついて座る。 良次は、正座のまま床に手をつくと、そのままおじさんに向かって頭を下げた。 「利久を、俺に下さい」 驚いて良次を止めようとするけど、逆に手で制される。 「りょ、良次!?」 「利久と真剣に付き合っています。」 シンーっと部屋が静まり返る。 「俺の事を信用して、利久を預けて下さったのに、裏切る形になってしまってすみません。だけど、利久の事は必ず幸せにします」 おじさんが、手を自分の顔に当てて息を深く吐いた。 おじさんが何を言うのか、身構える。 がっかりさせてしまっただろうか。 呆れられてしまっただろうか。 ………気持ち悪いと、思われただろうか? おじさんの反応が怖くて、きつく両方の掌を爪が食い込む程握り締める。 俯くと、良次が俺の左手を強く握った。 驚いて良次の方を見ると、良次は瞬き一つせず、秋人おじさんを真っ直ぐ見つめていた。 その横顔を見て、俺は確信した。 もし、おじさんに怒られたり、反対されても、きっと大丈夫。 良次についていけば、絶対になんとかなるって。 許して貰えるまで何度だって伝えようって。 そう思った。

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