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《42》

「お前は昔から目の前の事しか考えられねぇし、頑固だったからな。俺が何言ったって、どうせ痛い目みてからじゃねぇと考えらんねぇだろ」 「…」 「困った事があれば、言えばいい。出来る限りの事はしてやる」 「おじさん…!」 もしかしたら反対されているのかもと思ったから、おじさんの言葉に俺は胸を撫で下ろした。 「まさかお前らが、まだ小学校に入る前の約束を覚えてるとはな。どうせガキの口約束だと甘く見てたが、良次の執着勝ちだな」 苦笑いをしながらそう吐露するおじさんの言葉の意味が分からずに、俺は首を傾げた。 「………え?」 「秋人さん…、それは一体どういう事ですか?」 おじさんの言葉の意味が分からなくて、俺と良次は聞き返す。 「どうもこうも、昔、葬式の時に迷子になった利久を、良次が手を繫いで連れて来たと思ったら結婚するってきかなくて大騒ぎしたじゃねぇか」 「「…………は?」」 俺と良次の声が見事にハモる。 「我が儘一つ言った事無い良次があんなに必死になって、絶対に面倒みるから!って必死に食い下がってな。利久がその時に着てたパーカーといい、どう見ても嫁を貰うっていうより犬を拾って飼いたいって感じで、当時俺は笑ったけどな」 「おじさん、ありゃ犬じゃねぇ狼だ」 俺のお気に入りだったパーカーは、おじさんも犬だと思ってたのか…。 いや、そんな事は今はどうでもよくて…。 「ま、待って下さい!あ、秋人さん、え…?じゃあ、迷子になってた利久の事を見つけたのって…」 「何言ってんだ。知ってて付き合ったんじゃないのか?」 「いや…、まさか…」 「………へぇ」 良次とおじさんのやり取りを、俺は首を傾げて眺めていた。 「まさか覚えてないのに、10年越しに本当に付き合うとはな。念願叶って良かったじゃねぇか」 ニヤリと口の端を釣り上げて笑うおじさんに、俺と良次はお互いの顔を見合わせた。 うまく状況を飲み込めない俺とは違い、頭の回転の速い良次はみるみるうちに顔が赤くなっていく。 それを見て、俺はようやく 初恋の王子様が良次だった事に気がついた。

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