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可愛い狼の女の子《1》~良次視点~

秋人さんに言われるまで、すっかり忘れてしまっていた。 いや、忘れる為に、自分で記憶に重い蓋をしていたのかもしれない。 俺の初恋は、小学校に上がる前の6歳の時だった。 それは突然訪れた。 優しかった祖母の突然の死。 初めての身内の死に、まだ悲しみという感情がうまく結び付かなかった。 ただ漠然と、もうお祖母様には会えないのだという事だけは理解していた。 思えば、あれが人生で初めての喪失感だったのだと思う。 だけど、その日、喪失感と共に、俺はもう一つ新しい感情を手に入れた。 葬式が一段落ついた頃、急に大人達が何やら騒ぎ出した。 何となくそれを眺めていると、どうやら参列した子供が一人迷子になってしまったらしかった。 自分には関係のない事のはずだった。 迷子になるなんて、浅はかだな。 同年代の子供というのは、何故自分の経路を確認せずに知らない場所へ行ってしまうのだろうかと、内心呆れていた。 ただ手持ち無沙汰になり、ふらふらと斎場の裏手の奥に行くと奥に続く獣道があった。 何となくそこを覗くと、微かに泣き声が聞こえた。 もしかしたらと思い奥へと足を踏み入れると、そこにはパーカーを着た子供がしゃくり上げながら泣いていた。 「泣いてるの?」 その子を怖がらせない様に、なるべく優しい声で話し掛けた。 だけど、その子は心底驚いた様子で、俺の声に飛び上がって慌てた様子で頭を抱えてしゃがみ込んだ。

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