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淡い恋《1》~志水視点~

「え!?じゃあ、小野部の初恋の相手って良次なワケ!?」 「そ、だから良次の初恋の相手もお姫様」 「はぁ~…、何ともロマンチックなお話で…。ただし、二人とも男だけどな」 俺は優と一緒に、空き教室で昼休みを過ごしていた。 「お前、知ってたんなら2人に教えてやれば良かったのに。小野辺が可哀想だろ」 「俺も確信が持てたのは昨日だよ」 非難の眼差しを向ける優に向かって、肩を竦めてみせる。 優にはそう言ったけれど、教えるのは少し癪だったのもある。 このまま2人が気づかなければ、頃合いを見て教えようとは思っていたけれど。 それに、初恋の相手がお互いじゃなかったとしても、2人が相思相愛である事に変わりは無い。 だから、少しくらいの意地悪は大目にみて欲しい。 自分は小野部に盛大にフラれてしまったのだから。 もし、俺の方が良次より先に初恋のお姫様に出逢えていたら、もしかしたら。 そんな俺の狡い算段を、お姫様はいとも簡単に握り潰してしまった。 「俺だって運命的な再会してるんだけどな…。いつも、良次は軽々とその上をいくんだ。参るよ」 「……志水?」 「まぁ、初恋の可愛いあの子が、まさかこんなに逞しくなってるとは思わなかったけれどね」 「志水…、お前…、まさか…」 「残念だよ」 初恋の子が男の子で、ましてや良次の恋人だなんて。 最初から、良次と同じ子を好きになった時点で、俺に勝ち目なんてなかっただろう。 子供の頃。 あれは、良次のお祖母様のお葬式だった。 俺の父親と良次の父親は古い付き合いで、俺達も子供の頃からの幼馴染だった。 そういう経緯があり、俺もあの日大和家の葬儀に参列していた。 俺も、良次のお祖母様には随分可愛がってもらったから、とても悲しかったのを覚えている。 その悲しみの中。 良次に手を引かれて現れた、小さくて可愛いお姫様に、俺は一目で恋に落ちた。 それが初恋だった。

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