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雨降ってなんとやら《1》

「いやさ、本当。仲直りしたみたいで、良かったよ。うん、本当」 優がそこまで言って、息を吐く。 「嬉しくて、手繋いで登校してくるのは分かるとしてだ。授業中も休憩時間も繋ぎっぱなしなのは何なの?離したら死ぬの?それとも、うっかり接着剤でくっついたワケ?」 俺は、あまりの恥ずかしさに俯く。 いや、ほんとに。 多分優は、朝俺達が手を繋いで登校してきた時からツッコミたい衝動を抑えてくれていたのだろう。 アレだけ悩んでいた俺を、励ましてくれていた優の事、きっと最初は見て見ぬフリをしてくれていたのだと思う。 きっと気が済めば、自然と離れるだろうと思っていたに違いない。 それが、いつまで経っても離れる気配がない俺達に、放課後まで我慢してくれた忍耐力が凄いと思う。 「そんな訳ねーだろ、非常識が」 「今現在進行形で目の前で非常識な事してるカップルがいるんですがね」 「ゆ、優、その、ほんと、見苦しくてごめん…」 本当、居たたまれない。 良次がずっと俺の手を握っている。 恥ずかしいと思いつつ、嬉しくてそれを振り払えない自分も自分である。 「あのなぁ、小野部。コイツに、うざいからやめろって言って良いんだぞ?こんな四六時中引っ付かれたら、小野部のプライベートな時間ゼロだろ」 「お、俺、嫌じゃなくて…、だから、その…、ごめん…」 消え入りそうな声で謝る俺を、優とクラスの男子が生暖かい目で見てくる。 そして、クラスの女子は何故かキラキラと目を輝かせている。 頼むから、動画を撮るのはやめて欲しい。 「利久、コイツになんて謝らなくていいから」 「いや、お前が謝れよ!」 最初から最後まで正しいツッコミをした優が、その後男子からは勇者と呼ばれ、女子からは大顰蹙を買っていた。

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