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《3》
「ほんと…、可愛いな、利久は」
「はぁ!?」
どこをどう聞いたら、そんな感想になるのか意味が分からない。
「健気で、純粋で、本当、可愛い」
「………」
良次の感想は意味が分からなかったけれど、愛おしそうに見つめられて、良次が本心でそう思って言っているのだという事は分かった。
熱っぽい視線で、甘ったるい声で。
視覚からも聴覚からも、俺の脳を侵食していく。
顔が熱い。
変な気分になりそうだ。
引きずられそうになる感覚を必死に振り払って、俺は佐久間の話題に話を戻す。
「そ…その、俺あんまり覚えてねぇんだけどさ、佐久間ってどんな奴?」
「……佐久間ねぇ。腕っぷしだけなら、うちのグループのナンバー3って言っても過言じゃない位の実力なんだよな。実際、幹部に昇格しても良いんじゃねぇかって話も出てたんだよ。」
「結構、強かったもんな」
だから、手加減してやれず、大怪我をさせてしまった。
「…んで、目の前に小野部利久が現れたもんだから、焦ったんだろうな。小野部利久をヤレば、幹部昇進の決定打になるってな。正直、佐久間が多勢で一人を襲撃するなんて、初めてだったから、俺も聞いた時は驚いたけどな。プライドも高い奴だし」
「そう…なんだ…」
もし、俺を倒せたら、今頃佐久間はメビウスの幹部だったんだろう。
それが、俺に殴られちまったせいで、病院送りだ。
相当恨まれているだろう。
「手加減…、してやれたら良かったんだけど…」
俺の言葉に、良次が苦笑いする。
「頼むから、俺の事は殴るなよ?勝てる気が1mmもしねぇ」
「…殴んねぇよ、バカ…」
何で、好きなヤツを殴るんだよ。
ムッとした俺の機嫌を取ろうとしているのか、良次が俺の肩に腕を回す。
「痴話ゲンカしちまった時とか、ほら、……俺に、襲われた時とか…?」
襲われた時、の所の声が、妙に艶めかしい。
鈍い俺でも、それが性的な意味合いだと分かるように、わざと熱っぽい言い方をしたんだと思う。
「……殴った事、ねぇだろ…」
恥ずかしさに、素っ気なく答えるけれど、顔は赤くなっている気がする。
そんな俺の反応を見て、何が面白いのか、良次がニヤニヤしている。
「念の為だよ。襲いづらくなんだろ」
俺の耳元で囁きながら、良次は喉の奥で笑った。
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