258 / 346

《9》*

「あぁあぁ、どんだけ漏らすんだよ。ほんと、どうしようもねぇ淫乱だな」 俺の後ろに乱暴に食ませた指とは反対の指が、汗で張り付いた俺の髪を優しく掻き上げて耳に掛ける。 その指が、そのまま耳の後ろから後頭部を撫でる。 酷い言葉とは裏腹な、優しい仕草に、訳も分からず泣きたくなって、思わずしゃくり上げる。 「泣いてる顔も、たまんねぇ…」 熱っぽく呟いた、良次の咽が上下する。 良次の顔を見上げると、良次と目が合う。 良次の瞳が、俺を見てる。 俺だけを。 いつも沢山の人に囲まれている良次が、今は俺の事だけを見てる。 「お前の事、大切にして、嫌な事なんて一つもねぇ世界に閉じ込めて、可愛がってやりたいって思ってるのに、時々、無性にお前を虐めて、泣かせて、嬲って、屈服させたくなるよ…」 「……あっ、ああ、あっ…」 「俺は、一体、お前をどうしたいんだろうな」 「……りょ…う…ああ…っ」 なぁ、良次。 俺だって、そうだよ。 わかんねぇ事ばっかだよ。 だけど、お前に貰うもんは、何だって嬉しくて。 甘いチョコレートやケーキ、ぬいぐるみ。 知らなかった気持ちいい事や、温もり。 優しい良次も、ちょっと意地悪な良次も全部、大好きで、大切なんだ。 全部初めての事ばかりで、大事なんだ。 良次と一緒に過ごす時間も、良次がくれるもんは、何だって嬉しいんだって。 良次が喜んでくれるなら、虐められたって、痛くされたって良いんだって。 どう言えば、伝わるんだろう。 ほんと、もっとうまく伝えられたらいいのに…。

ともだちにシェアしよう!