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《9》*
「あぁあぁ、どんだけ漏らすんだよ。ほんと、どうしようもねぇ淫乱だな」
俺の後ろに乱暴に食ませた指とは反対の指が、汗で張り付いた俺の髪を優しく掻き上げて耳に掛ける。
その指が、そのまま耳の後ろから後頭部を撫でる。
酷い言葉とは裏腹な、優しい仕草に、訳も分からず泣きたくなって、思わずしゃくり上げる。
「泣いてる顔も、たまんねぇ…」
熱っぽく呟いた、良次の咽が上下する。
良次の顔を見上げると、良次と目が合う。
良次の瞳が、俺を見てる。
俺だけを。
いつも沢山の人に囲まれている良次が、今は俺の事だけを見てる。
「お前の事、大切にして、嫌な事なんて一つもねぇ世界に閉じ込めて、可愛がってやりたいって思ってるのに、時々、無性にお前を虐めて、泣かせて、嬲って、屈服させたくなるよ…」
「……あっ、ああ、あっ…」
「俺は、一体、お前をどうしたいんだろうな」
「……りょ…う…ああ…っ」
なぁ、良次。
俺だって、そうだよ。
わかんねぇ事ばっかだよ。
だけど、お前に貰うもんは、何だって嬉しくて。
甘いチョコレートやケーキ、ぬいぐるみ。
知らなかった気持ちいい事や、温もり。
優しい良次も、ちょっと意地悪な良次も全部、大好きで、大切なんだ。
全部初めての事ばかりで、大事なんだ。
良次と一緒に過ごす時間も、良次がくれるもんは、何だって嬉しいんだって。
良次が喜んでくれるなら、虐められたって、痛くされたって良いんだって。
どう言えば、伝わるんだろう。
ほんと、もっとうまく伝えられたらいいのに…。
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