「なぁ…、利久、俺はお前に言ってなかった事があるんだよ」 快楽に沈みそうになる意識の中、まるで秘密を告白する様な口調で、良次が囁く。 「お前と出会う前まで…」 熱っぽく。 俺に愛を囁く時と、全く同じ口調で。 声で。 「俺が、小野部利久を潰したいって、ずっと思ってた」 見た事もない、凶暴な顔だった。 ゾワッと足元から、何かが這い上がってくる。 「あっ…、あっ…」 快楽に塗れた頭のどこかで、冷静に思う。 あ、これ、ダメなヤツだ。 「ボコボコにぶん殴って、」 俺の知らない良次だ。 「這いつくばらせて、」 チームを率いて。 「許しを乞わせて」 その頂点に君臨する。 「服従させたかった」 暴君の顔。 「…っ、ふっ…」 ダメだ。 そう思った瞬間、目の前が白む。 良次の指を、身体が無意識に食む。 「…あ、あぁ、あぁぁあ…！」 良次が信じられないものを見る様な目で、俺を凝視する。 「……………」 「………はぁっ、…はっ、はっ…、あっ…」 訳も分からず、放心状態で荒い息を吐く。 そんな俺を、良次は呆然と見下ろしていた。 暫く俺に釘付けになっていた瞳が、急にギラギラと血走った。 まるで、親の仇でも見るかの様に、怒りで震える様に俺を睨むと、俺の頭を乱暴に掴んで顔を上げさせる。 「…いっ…、あっ、はぁ、はぁ…」 「…………………お前、待てよ…」 掠れた声でそう呟いた後。 「今、何でイッた…？」 俺に向かって、そう言った。