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《19》

ちょっと笑った後、良次がポツリと呟く。 「………、利久に…」 「……え?」 「利久に、俺の汚い部分も知って欲しかったのかもしれない」 「…?」 「そんで、俺も知りたかったのかも。優しくて、正義感の強いお前が、俺がどういう人間なのか知っても、離れねぇか」 「………」 「強い奴を暴力で屈服させて、自分の自尊心を満たす様な最低のクズだって知ったら、利久がどう思うのか、知りたかったんだろうな。それで、実際、引かれたり、嫌われたりしたら傷つく癖にな…」 淡々と語る良次の声は、どこかちょっと寂しそうだった。 「やっぱり、さっきは興奮しすぎてまともな判断できてなかったんだろうな」 良次が俺の顔を覗き込む。 俺の感情を探る様に。 「……ひいてる?」 「ひいてねぇ。…俺だって、散々喧嘩してきたし」 「正当防衛だろう。意味合いが全然違う」 「おんなじだよ…。人様に怪我させちまったら」 だから、俺は佐久間に謝らねぇといけないし、償わねぇといけないんだから。 「同じじゃないよ。自分を守る為と、自分の利益の為にやんのとじゃ、全然違う」 俺の腰を抱く良次の腕に、力が入る。 「俺の事怖くない?利久も対象だったんだって言ってるんだよ」 「………怖くねぇ。俺の方が力強いし」 「…ふっ、ははっ、そうだな。腕力じゃ利久に絶対敵わないな」 「…そうだよ。だから、変な心配すんな」 「…そうだな…。…利久が、先に俺の家に住む事になって良かったよ」 「なんで?」 「暴力振るって利久に嫌われずにすんだからな」 「思いっきりメンチ切られた上に脅されたけどな」 「………………え?もしかして、気にしてるの?」 「冗談だよ。気にしてねぇ」 「…なんだ、脅かすなよ」 珍しく良次が焦った様な反応をするから、ちょっとだけ嬉しい。 だってさ。 それって、俺に嫌われたくねぇって、そういう事だろ? 自分の事知ってほしいけど、それで嫌われるのは怖いって。 俺とおんなじ様に、良次も俺とずっと一緒にいたいって、そう思ってくれてるって。 そう思って、良いんだよな?

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