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《26》
「アイツが、佐久間…………」
確かに、見覚えがある気がする。
俺の視線の先には、銀髪の少年が、俺を襲撃した時の様に何人かのメンバーを従えて立っていた。
恐らく俺を襲った時の奴らだろう。
「そうだ」
俺は、少しだけたじろぐ。
佐久間の腕には、まだ痛々しいギブスがついていた。
怪我までさせてしまって、謝ったからと言って許して貰えるとは思わないけど、ケジメはつけないといけない。
謝ろうと思って、一歩前に踏み出したその瞬間。
「すんませんでした!!」
「…………へ?」
自分が謝るよりも先に、佐久間が俺に向かって跪き、地面に頭を擦り付ける様に叫ぶ。
所謂、土下座だ。
それに習って、周りの奴らも次々に土下座し、口々に謝罪する。
「え!?ちょっ、な、何!?何やってんだよ!?」
大混乱の中、まさか良次が命令してこんな事をさせたのではないかと、慌てて良次を振り返る。
そんな俺の意図を汲み取ったのか、良次は眉を寄せて肩を竦めてみせる。
「一応、言っておくけど、コイツらの方からお前に謝りたいって言ってきたんだからな」
「え!?な、何でっ!?」
怪我をさせてしまったのに、何故佐久間達の方が謝りたいと言い出すのか分からずに聞き返す。
だって、謝んなきゃいけないのは俺の方だろう。
最悪、殴られても文句言えない覚悟で此処に来たんだから。
「お前の事、集団で襲った事について謝りたいんだろ」
「いや!俺は、怪我とか全くしてねぇんだから、それは全然良いんだって!」
俺の言葉に、それまで地面に額を押しつけていた佐久間が、勢いよく顔を上げる。
「よくないっす!小野部さん!俺、初めて小野部さんに会えて、すげぇ興奮しちまって!」
「は、はぁ?」
「自分の力を過信して、小野部さんと力比べしてぇって思っちまったんす!でも、俺が全然敵わねぇから、コイツらが黙って見てらんなくて、結果的に集団で襲撃しちまう形になっちまって…!」
「いや、だから…」
「そもそも、小野部さんは喧嘩嫌いだってのに、噂を真に受けて、襲いかかっちまって…!」
「いや…、本当に、大丈夫だからっ!別にあんなの日常茶飯事だし、俺は何ともないから!だから、そんな土下座なんて、やめてくれよ!居たたまれねぇよっ!」
傍から見たら、怪我人を含めて十数人を土下座させてる図って、かなり酷いヤツ過ぎるだろ!
本気で慌ててる俺を見て、良次がやれやれと溜め息を吐いた。
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