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《6》
「全く…。あの馬鹿がごめんな、利久」
家に帰ってきて、鞄を置きながら良次が続ける。
「怖かったな、なるべく俺が側にいる様にするし、ちゃんと見張れって佐久間にも言っといたから」
「…うん」
別に、相原自体は怖くはないんだけれど、相原の言葉が耳にまだ残っている気がした。
「何か…、本格的に、嫌われちまったみたいだな…」
今までだって、別に誰かに好かれる様な人生を送ってきた訳じゃないし、寧ろ嫌われたり、怖がられたりする事なんて日常茶飯事だった。
だから、それ自体は、別になんでもないんだけど。
良次の仲間に嫌われているという事実が、自分で思っていたよりもショックだったみたいだ。
メビウスのメンバーの中には、俺の事を面白く思っていないヤツはいると思う。
その中でも、特に天皇寺と相原には心底嫌われている様だった。
天皇寺の冷ややかな軽蔑の眼差しと、相原の嫌悪の言葉を思い出して、俺は項垂れた。
「利久…」
良次が、複雑そうに眉を顰める。
「別に、利久がアイツらに好かれる必要なんてねぇとは思ってるけど、俺は」
「………え?」
「お前の魅力に気づいて、志水みたいに変な気起こされても困るしな」
そう不機嫌そうに言った良次の言葉に、俺は思わず言葉を失った。
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