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《14》
「これ、7番テーブルにお願いトッシー」
「へーい」
最初はこんな姿を人に見られるのは大分抵抗があったけど、よくよく周りを見渡せば、男子全員が女装している空間だ。
勿論、早く時間が過ぎる事を願ってはいるが、クラスの他の男子も同じ様な格好をしている事が、少しだけ心強い。
それに。
良次がいない間に頑張って働けば、良次の役に立てるかもしれない。
何よりも、俺のモチベーションはその一心を糧に保っていた。
そう、言われた飲み物を指示されたテーブルに運ぶまでは。
「……………………え?」
「…………………………は?」
思わず、漏れた声に振り返った相原と目が合うまでは…だ。
「……………な」
何やってんだお前…!
パクパクと声にならない相原の口元がそう動く。
その向かいに座っていた志水が、呆然と突っ立っていた俺の手から飲み物をテーブルに移す。
「ありがとう」
「あっ、あっ…」
マジで最悪。
よりにも寄って知り合いに見られるなんて。
「いやぁ、どんな事やってるのかなーって立ち寄ったら、こんな可愛い子が接客してくれるなら来た甲斐があったなぁ、ね、相原」
「…………お前、マジで言ってんの?」
爽やかな笑顔でたちの悪い冗談を言う志水に対して、相原の顔は大分引き攣っていた。
勿論、俺の顔もだ。
「早くコレ飲んで出るぞ、志水」
あ、そうか。
相原が俺から視線を逸らしたのを見て、思い出す。
学校では、俺達が知り合いなのは秘密なんだっけ。
相原のよそよそしい態度に、納得する。
てっきり馬鹿にされるかと思っていたけれど、相原は堪えた様で低く呟く。
いや、きっと後で馬鹿にはされるだろうけど。
そう考え至って、結局俺は途方に暮れた。
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